COLUMN
コラム

ホテルラウンジで働く新常識。資産活用型コワーキングが伸びる理由【2026】

コワーキングスペースといえば、物件を借りて、内装を整えて、ゼロから立ち上げるもの――そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。けれど今、じわじわ存在感を増しているのは、ホテルのラウンジや商業施設の余剰スペースを活かす「資産活用型コワーキング」です。利用者にとっては心地よく、運営者にとっては無理が少ない。この新しい形が、なぜ選ばれているのかを、やさしくわかりやすく紐解いていきます。
この記事でわかること
- なぜ従来型のコワーキング運営は重くなりやすいのか
- 資産活用型コワーキングが注目される理由
- ホテル併設型・商業施設型・アグリゲーター型の違い
- 運営側・利用者側、それぞれのメリット
- ホテル型コワーキングならではの「特別感」の魅力
1. 「一から作るコワーキング」が重くなりやすい理由
コワーキングスペースをゼロから開業する場合、まず必要になるのが物件取得です。そこに内装工事、家具、通信設備、受付体制などが加わると、オープン前からまとまった初期投資が発生します。
しかも、開業後は家賃や人件費といった固定費が毎月かかり続けます。利用者が少ない月でも、コストだけは止まりません。立地が良いほど賃料は上がりやすく、空間づくりにこだわるほど回収までのハードルも高くなります。
一方で、フレキシブルオフィス市場そのものは拡大基調にあり、供給拡大が続いてきました。つまり需要はあるけれど、従来型のつくり方だと運営が重くなりやすい――そこに今の課題があります。(ザイマックス総研/TOPPAN)
2. 資産活用型コワーキングとは何か
資産活用型コワーキングとは、すでにある空間を、働く場所として再編集する考え方です。たとえばホテルのラウンジ、朝食会場、空き客室、商業施設内のラウンジ、イベントスペースなどを、時間帯や利用目的に応じてワークスペースとして活かしていきます。
このモデルの魅力は、空間そのものを一から作らなくていいことです。既存のインテリア、Wi-Fi、電源、ドリンク提供設備、受付導線などを活用しながら、予約・決済アプリや個室ブースなど必要最小限の機能を後乗せすることで、比較的軽やかに事業化できます。
3. なぜ「資産活用型」が強いのか

初期投資を抑えやすい
既存空間を活かせるため、ゼロベースで内装を作り込む必要がありません。もともと雰囲気のあるホテルラウンジや商業施設のラウンジであれば、それ自体が価値になります。空間づくりにかかるコストと時間を抑えやすいのは、大きな強みです。
空き時間・空き場所を収益に変えやすい
ホテルには、チェックアウト後からチェックイン前まで比較的静かな時間帯があります。商業施設にも、常時フル稼働しているわけではない余剰区画があります。これまで売上を生まなかった時間と場所に、新しい用途を与えられるのが資産活用型の面白さです。
運営負荷を増やしすぎずに始めやすい
ホテルや施設にすでにある受付・清掃・設備管理の仕組みを活かせるため、専任スタッフを大きく増やさずに運営しやすいケースがあります。さらに、予約・決済・在庫管理をデジタル化できれば、現場負担を抑えながら回しやすくなります。
4. 利用者にとっての魅力は「効率」だけではない
利用者側のメリットは、単に仕事ができる場所が増えることだけではありません。ホテルや上質なラウンジ空間には、一般的なオフィスやカフェとは違う、静かな高揚感があります。整った椅子、落ち着いた照明、ほどよい人の気配、きれいな眺め。そうした環境は、集中しやすさだけでなく、気分転換やストレスの緩和にもつながります。
実際にThreesは「全国のホテルがあなたの書斎に」というコンセプトを掲げ、自宅やカフェでは集中しづらい人に向けて、ホテル空間を仕事場として提案しています。電源・Wi-Fi・ドリンクが使えるスペースや、個室・オープン席を選べる点も、ホテル型コワーキングの魅力をわかりやすく表しています。
5. 資産活用型コワーキングの主な3パターン

1. ホテル併設型
もっともわかりやすいのが、ホテルのラウンジや館内スペースをコワーキングとして使う形です。たとえばプラトンホテル四日市では、ホテル10階の空間をコワーキングスペースとして運営しており、光10G回線、フリードリンク、駅徒歩約3分という使いやすさが整っています。宿泊者は無料で利用できる点も、ホテルならではです。
また、都ホテル 岐阜長良川のコワーキングスペース「aragan」は、ワークゾーン、ソロワークゾーン、リラクゼーションゾーン、ラウンジゾーンの4つのエリアを備えています。ホテルならではの眺望や、レストラン・駐車場・フィットネスクラブの優待があるのも特徴で、「ただ仕事をするだけではない」価値を感じさせてくれます。
さらにLIVELY HOTELSでは、宿泊ゲストが客室だけでなくラウンジや共用スペース、施設によってはテラスやレストランも作業場所として使えると案内しています。ホテルという場所が、泊まるだけでなく「働く場所」として再定義されている好例です。
2. 商業施設・既存ラウンジ活用型
商業施設の中にあるラウンジやブックラウンジを、仕事・休憩・打ち合わせの場として使えるようにする形も増えています。たとえばSHARE LOUNGEは、ワークスペースとしても、気分転換のカフェとしても、自由にドロップイン利用できるサービスです。電源・Wi-Fiに加え、モニターやケーブルの貸出、フリードリンク・フリースナック、書籍ライブラリーまで備えた店舗もあり、「商業空間を働く場に変える」好例といえます。
3. アグリゲーター型
複数の空間をネットワーク化し、アプリや予約基盤でまとめて使いやすくするのがアグリゲーター型です。Threesは、ホテル空間を中心に、集中して働ける場所を探せるサービスとして展開されています。
一方、droppinは、コワーキングスペース、個室BOX、会議室など多様なワークスペースを一元的に検索・予約できるサービスです。こうしたアグリゲーター型が広がることで、「空間を持っている側」と「今すぐ使いたい側」が、よりスムーズにつながるようになっています。
また、空間オーナー側がゼロから大掛かりなシステムを組むことなく、最小限の手間で無人予約やスマート運用を導入できるOneplace HUBのようなプラットフォームを活用するケースも増えています。こうした仕組みが普及することで、既存の店舗や施設がより軽やかにワーキングスペースへと進化できるようになりました。
6. ホテル型コワーキングが心に残る理由

ここは少し個人的な感覚なのですが、自室で仕事をしていると、どうしても気分の切り替えが難しい日があります。そんなとき、いつもの作業机ではなく、少しだけ非日常を感じられるホテルのラウンジで、コーヒーを飲みながら静かに仕事ができたら素敵だなと思うことがあります。
出張先のビジネスホテルとも、家族旅行で泊まるホテルともまた違う、日常の延長線上にある「小さな特別感」。その空気に身を置くだけで、気持ちがふっと軽くなったり、頭の中が整理されたりすることがあります。ホテル型コワーキングの魅力は、作業効率の高さだけでなく、気分転換やストレス解消にもつながるところにあるのかもしれません。
7. これからのコワーキングは「作る」より「活かす」へ
これから先、コワーキング市場で存在感を高めていくのは、ただ広い空間を持つ事業者ではなく、「すでにある空間の価値を、どう再編集できるか」を考えられる事業者ではないでしょうか。
ホテルのラウンジ、商業施設の余剰区画、朝食会場、空き客室、ブックラウンジ、レストランのオフピーク時間。こうした空間に、予約・決済の仕組みや最低限のワーク設備を掛け合わせることで、利用者には新しい働く体験を、運営者には新しい収益の柱を生み出せます。
まとめ
一から物件を借りて大きな固定費を抱える従来型のコワーキングは、今後も一定の役割を担いながらも、運営の難しさが増していく場面があるはずです。その中で、既存のホテルや商業施設の魅力を活かしながら運営できる「資産活用型コワーキング」は、利用者にも運営者にもやさしい選択肢として、ますます広がっていく可能性があります。
仕事をする場所は、もう「オフィス」か「自宅」だけではありません。せっかくなら、少し気分が上がって、少し心がほどける場所で働く。そんな働き方が、これからもっと自然になっていくのかもしれません。